【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「黙っとられんわ!!!あんたには関係ない話やけん
勝手に人んちば来て、自分勝手な事ばっか言いよって!
あたしは大輝の世話になんかならんと、人を金で支配しようとしとる所がムカつく言うとるやん!
出てけ!お前すぐに出ていけーーーーー!!!!」
琴子がそこでブチ切れて
西城さんの体を両手で殴り始めた。
出て行けー!と叫びながらプイっと顔を背けて
琴音を無理やり連れ出して自分の部屋へたてこもってしまった。
残されたのは西城さんと俺…
どうしろと…
向かい合うと
切れ長の冷たい目。
フッと小さく笑う。
そしてスッと立ち上がった。
なんて姿勢の良い人だろう。
俺の方が大きいのに、何故かこの人の方が存在感がある。 これはオーラと言うのか
「コーヒーご馳走様でした」
立ち上がった後ろ姿
玄関まで行って靴を履く前
ぴたりと立ち止まった。
揃えられた靴に汚れはひとつも無くて、それはおそらく高級ブランドの物だろう。
こちらへ振り返って、あの冷たい視線を送る。
「僕がさっき言った事は本気ですよ」
「でも琴子は………」
風俗嬢だよ、と思った自分にハッとした。
批難するつもりも、否定するつもりもなかった。
差別した事も……
でもその言葉が口から出てきそうになって、そんな自分自身を軽蔑した。