【完】ボクと風俗嬢と琴の音
風俗嬢だからって何だって言うんだ。
普通の恋愛をしちゃいけないとでも
俺はどれだけ偉い人間になったつもりでいた?
「職業の事ですか?」
琴音や琴子みたいに、全ての事を見透かす目をするから
「僕は彼女がどんな職業であったとしても好きになっていたと思います。
彼女の過去がどうだろうが、気にしません。
けど、とても独占欲が強い性格なので彼女が自分の彼女になったとしたら風俗嬢でいる事は許せません。
全部辞めさせます。辞めさせた後の生活だって保障する力は自分にはあります。
だから僕の中で彼女の職業は現在さっして問題ではありません」
本気、なのだと思った。
そして辞めさせた後の生活を保障する力、と言われた時にドキリとした。
…俺には、そんな力はない。
一流企業勤めと周りに言われたとして
人ひとりさえ養っていく力はまだない。けど目の前の自信満々に見える冷徹そうな男には、その力はある。
「井上さんも…」
「え?」
「僕が家賃を半分補填出来るのであればその方が良いのではないのですか?
恋人ではない他人と同居生活なんて正直言って苦痛でしょう」
「それは……」