【完】ボクと風俗嬢と琴の音
俺の目的は琴音と生活できる空間。
そしてこのマンションは条件がぴったりだった。
広さも綺麗さも、リビングに陽があたる事も
そこに琴子がいなくても…全く問題はない、はずなんだが……。
「彼女は猫が好きなようだから
引っ越したら好きな猫を飼えばいい。
この家にいる猫ちゃんはあなたの物のようですから。
寂しいのなら、新しい物を用意すればいい」
琴音の代わり?
代わりなんていない。けどそれは俺の考えであって琴子がどう思っているのかなんて知らない。
琴音が可愛くて、猫が大好きになった。と彼女は言った。
でもそれは別に琴音じゃなくなっていいのかもしれない。
俺の中で琴音の代わりはいないけれど
琴子にとって琴音は沢山いる中のうちの1匹に過ぎないのかもしれない。
「でも…物なんかじゃありません」
そう言ったら西城さんはハハッと笑って「失礼」とだけ言った。
「井上さんも考えておいてくださいよ。
そして出来れば彼女を説得しておいてもらいたいものですけど
お互いにとっても損をするような話じゃないと思いますけど」
「でも……」
「でも?井上さんにとって都合の悪い事がありますか?」