【完】ボクと風俗嬢と琴の音

「ねぇねぇ、晴人くん、見て見てーーー」


「どれどれ?」


「これ、マグロ。美味しそうでしょ?」


「あははは、美味しそうって!!」


「あー…何で笑うのー?
だってマグロ…好きなんだもん」


「じゃあ、今日お寿司でも食べに行こうか?
たまには和食も」



山岡さんの顔がパアーっと明るくなっていった。
回転寿司は、ナイ。
回らない寿司。考えるのもメンドイ。
琴子は回転寿司好きだって言ってた(一緒に食べに行った事はない)
行こうねぇ~とふにゃっとした笑顔で話をしていた、この前。

もういいや。適当で
行き当たりばったりで
適当に想いのまま、たまたま歩いていたら見つけた寿司屋で、マグロを食おう。





12月。

別に琴子との関係に何も変わりはしない。
あれから西城さんとはどうなった?とこちらから聞くのもなんだし
次の日になったら琴子はいつもと変わらずに、スッピン眼鏡でジャージを着て、お菓子を食べながらテレビを見てゲラゲラと笑っていたし。

何も変わりはない。

そして今日は約束通り
山岡さんとの休日デート。リクエストの水族館。
しながわ水族館は、俺の思っている水族館とは少し違っていた。
おしゃれで近代的で、何故か水族館のくせにメリーゴーランドもある。室内メリーゴーランドはまるで夜景のように様々な光が点灯していた。


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