【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「晴人くん、クラゲ」
「ほうーすご」
「ね、本当にすごい
クラゲなんて綺麗と思った事がなかったけど
こうやって見るとすごく素敵ねぇ~
ロマンチック~」
なんて造りのお洒落な水族館だ。
ジェリーフィッシュランプル。
広い空間の中に、クラゲが漂う柱がいくつか輝いている。
ライトが照らされて、まるでイルミネーションのようにクラゲがぷかぷかと浮かぶ。
「なんかこのクラゲ……」
「ん?」
山岡さんは携帯のカメラで何枚も写真を撮っていた。
こちらを向いて首を傾げ、笑う。
俺はまだ、彼女の事をどうしても美麗ちゃんとは呼べない。
「似てるよね」
「えぇ~?あたし~?」
「うん、何かふわふわしてて」
「それって褒め言葉なのかなぁ~?」
敬語はいつの間にか取れていた。
何度か食事をしていてお互いに敬語は止めようと言っていたんだけど
やっぱりところどころに出てしまっていた敬語。
だからと言って、距離が近づいたかと言えば疑問なんだけど。
宝石箱みたいな水族館
琴子に選んでもらったコートを見て、山岡さんは「いい色」と褒めてくれた。
楽しい時間。きっと。これが正しい楽しい時間のはずなんだ。