【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「ねぇ、これ可愛くない?」
帰り際お土産屋さんに行って
ピンクと青のイルカのヌイグルミを手に取って山岡さんに見せた。
「可愛い、ね?」
「どっちにしよっかなぁー
どっちも捨てがたいなぁー」
「晴人くんはそういうの、好きなの?」
「いや、これはお土産で」
「あぁ、猫ちゃんの?」
「あー…そう。どうしよっかなぁー…
いーやどっちも買ってしまえ!」
「猫ちゃんには少し大きいかもしれないけどね」
イルカのピンクと青のぬいぐるみ。
1番初めに頭に思い浮かんだのは
琴子の喜ぶ顔だった。
かぁわぁいぃ~って言って、あの笑顔を見せるんだ。
俺を嬉しくさせるあの、笑顔を
こっそりとそれより一回り小さいイルカのぬいぐるみをもうひとつ購入した。
「なぁんかぁ~すごく楽しい
今日は本当に付き合ってくれてありがとう」
「いえいえいえいえ。
俺じゃなくても山岡さんを水族館に連れてきたいって男は沢山いるでしょー?」
「そんな事…
それにあたしは…晴人くんと一緒に来たかったんだもん」
ネットで検索した水族館から近い寿司屋。
そこまで歩いていた途中。
山岡さんは少しだけ唇を尖らせながら、上目遣いでこちらを見つめてきた。
伏し目がちになった小さな顔の頬はピンク色に染まっていた。それとお揃いのピンク色のグロスが唇の上に光っていた。