【完】ボクと風俗嬢と琴の音
別れ際
ユカリさんは思い出したように
優弥に話を掛けていた。
「そういえばクリスマスイブと言えば琴子の誕生日だわ」
「え?そうなの?」
「あの子彼氏も友達もいないしひとりぼっちかもー」
「えーそれ可哀想じゃん~一緒にパーティーでもしちゃう?」
話はそこまでしか聞こえなかった。
山岡さんは既に今から行く寿司屋の事で頭がいっぱいらしく
俺に何かを話を掛けてきたけど、それは全く頭には入らなかった。
「ねぇクリスマスどこに行こうか?」
「あぁ…行きたいところ…あったら考えておいて?」
人生2回目に出来そうだった彼女は
初恋の人によく似ていると思った人。
けれどよくよく考えてみれば、琴音先輩とは全然違うような
でも全く一緒の人なんてこの世にいるわけもなく
あの子、可愛い。
通りすがりの人が小さく言った声が耳に入った。
山岡さんは俺の顔を覗き込んで「ん?」と不思議そうな顔をして大きな目をぱちくりさせた。
ピンクのチーク、ピンクのリップ。
ファーのついた白いコート。
華奢な靴。
根本的な事を考えた。
俺、この人の事が好き?
好きになれるのか?