【完】ボクと風俗嬢と琴の音


「好きだ………」


無表情でそう言う彼の顔を見て、ふっと笑いがこみあげてきた。


「何笑ってんだよ」


「だってそんな真剣な顔で好きだって言われたら、なんっかおかしくて…」


大輝はゆっくりとわたしへ小さなキスを落として
またわたしの顔をじぃっと見つめながら、シャツのボタンに指をかける。

ぱちん、ぱちん、とひとつずつ脱がされて行く。


わたしも、大輝のシャツに手をかける。
あらわになっていく上半身には、適度な筋肉がついていた。



「デリヘル嬢はやめろ」


「それは聞いた」


「隼人に言っておく」


「それは友人としてですか?」


「いくら金を積んででも辞めさせてやる。
大丈夫、隼人は金が好きだから喜んで交渉に応じてくれる」


「交渉って、あたしは取引きされる物かって
しかも大金を出す価値もない」


大輝の瞳が優しく笑った。
そして再びわたしの唇にキスを落として、ブラジャーのホックを片手で器用に外していく。



< 296 / 611 >

この作品をシェア

pagetop