【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「価値は、買う側が決める問題だ。
取引きとはそういうものだ」
首筋を、大輝の舌がゆっくりとなぞる。
あ、と小さな吐息が漏れて、大輝が不敵な笑顔をこちらへ向ける。
「そして、都内のタワーマンションの契約をしてきた。
鍵はテーブルの上に置いておいた。
最上階。東京タワーがよく見える」
「それも聞いた。
でも、住むとは言っていない。それなのに勝手に契約をしてくるなんてあなたは自分勝手だ」
「猫が欲しければ好きな猫を選べばいい
何匹でも飼えばいい。バルコニーもある。日当たりも良好」
「琴音の代わりは、この世にはいない。
命を物扱いする人は軽蔑する」
「でも俺は猫が嫌いだ。
君の家にいた琴音も可愛くなくて大嫌い」
ハッキリと物を言う奴。
気持ち良いくらい、スカッと言い切ってやがる。
大輝の手が、わたしのスカートに伸びる。それと同時にわたしも大輝の背中に爪を立てる。
何かもうどうでもいいやって気持ちになる。
今はデリヘル勤務中だけど、本番もアリかなって
大輝とセックスをして、大輝を好きになって、生活の面倒を見てもらって好きなように生きる。
琴音の代わりはいないけれど、いつか別れの来るものならば傷はそのうち癒える。新しい猫も、大切に出来るような気がする。