【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「井上!この資料やり直し!」
「は、はいっ!」
休日は休む為にあるはずなのに、ここ最近はゆっくり出来ていない。
と、いうわけで月曜日の仕事は毎週最悪な形で幕を開ける。
吊り上がった目で俺の胸へ資料を押し付けたのは、上司である木村さん。
年齢不詳だけど、噂では30歳を越しているらしい。
お局、と言うのだろうか。
見るからに気の強さが滲み出ている彼女に、誰も頭が上がらない。
月曜日から、最悪かよ。
そう思いながらパソコンを開く。
昼からは取引先に挨拶に行って~…そのまま直帰しちゃおっかなぁ~…あ!今日夕方から会議入ってるんだっけ?!
メンドクセー。
頭の中で独り言を呟いていると、前のディスクから顔を出した同期の優弥が小声でこちらに声を掛ける。
「今日も木村嬢怖ぇなぁー?」
ディスクに向かったまま、手だけを動かして優弥へ返事をする。
「仕方がないよ。俺のミスだし」
「しっかしそれにしてもだ!
木村嬢は特に晴人への当たりがキツイと思うぞ?」
「そう?単に俺が仕事出来なくてムカつくだけでしょ。
それは自分のせいな訳だし」
「いやぁ~、あれは絶対に晴人に気があると見るね!
お前って母性本能くすぐられるタイプだから、年上女に好かれるじゃん」
「ありえないって!」