【完】ボクと風俗嬢と琴の音
12.晴人「無関心の在り方とは」
12.晴人「無関心の在り方とは」
「のうえ、井上ってば!」
「は、はいっ!」
「何ボーっとしちゃって、変な奴
プレゼンの資料良かったよ。これで行こう」
「あ、ありがとうございます」
「何よ、さっきからパソコンと睨めっこしちゃって、変な奴。
もうお昼よ」
木村さんに声を掛けられて
ハッと掛けられた時計を見る。
12時、少し過ぎていた。
さっき耳元で優弥がベラベラ喋っていて、ユカリさんが近くに来ているからランチにしにいくとか言っていたような言っていなかったような。
木村さんは俺の斜め前のディスクに腰をおろして
お弁当を広げた。
俺も自分の弁当箱を広げる。
社内は皆出払っていて、俺たちふたりきりだった。
「木村さんがお弁当なんて珍しいですね」
「そう?いっつも時間ないからね。
接待という名の飲み会も多いし
でも作れる時は出来るだけ作ろうとは思ってんのよ。料理は嫌いじゃないし」
「意外です」
「あんたの方が変なのよ。
男のくせに毎日毎日お弁当作ってきちゃって、しかもしっかりとしたお弁当だし。
入社してきた時は料理上手な母親か彼女がいるって思ったもんだわ」
「自分も…料理は趣味です…
趣味?いや趣味ではないか?
でも誰かが自分の料理を美味しく食べてくれる姿を見るのは好きだけど」
「最近、美味しく食べてくれる人でも失った?」
木村さんがこちらも見ずみお弁当に集中しながらそう言った。