【完】ボクと風俗嬢と琴の音

今日の木村さんは、なんだか優しい気がした。



「木村さんこそ片思いの彼とはどうですか?クリスマス近いんですけど」


「な、何であんたがそんな事を………知っていると言うのよ…」


木村さんが顔を真っ赤にして、こちらを見てきた。
手に持っている箸がぷるぷると震えている。


「秘密ですっ」





琴子とは
あれから余り話をしていない。

何かふにゃっとした笑顔で
店長に頼まれて、仕事の時間変えざる得なくなったぁ~といつもの調子で言っていた。
だから生活リズムが全く正反対になってしまった。


俺が仕事に行く時に琴子は寝ていて
俺が寝ようとする頃に帰ってくるようになった。
結果、一緒にご飯を食べる時間はほとんどなくなった。




もしかしたら西城グループの御曹司と上手くやっているのかもしれない。
良い事だと思う。別に俺に関係ないけど。
西城さんは本気だったようだし、案外性格も良かったりするかもしれない。幸せになれるかもしれない。
俺じゃ到底用意出来ない高級タワーマンションも、全然買ってあげられない高級ブランドも、琴音の代わりになる可愛い猫も

琴子はいつもの調子で目を輝かせて’かわい~い’って言って西城さんへあの笑顔を向けるのか。
仕事を辞めてもその幸せを掴めるのならば、それでいいのかもしれない。それが琴子の幸せなのかもしれない。


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