【完】ボクと風俗嬢と琴の音
金曜日の夜がいつの間にか楽しみになっていた。
元々楽しみではあったんだけど、楽しみが2倍になるって信じてなかったけど、ありゃ本当だったらしい。
夜更かしして、好きな漫画やアニメや映画を見て、傍らには琴音がいてくれて
そして俺の目の前には、常にあの笑顔があった。
チリンチリン。
夢うつつでリビングの座椅子で眠ってしまったようだ。
琴音の鈴の音が響いて、ゆっくりと目を開けると、そこにはたった今帰宅したであろう琴子がしゃがみこんで琴音の背中を撫でる。
つきっぱなしのテレビからはニュースが流れていて
手元にあった携帯は23時ちょっと前と時刻が表示されている。
「あぁ、ごめん~起こしちゃった?」
「んーんー全然」
「嘘、寝てたじゃん。声ガラガラ」
何も変わりやしなかった。
俺への態度も、笑顔も
ただ出勤時間と帰宅時間が変わっただけ。そのせいで生活リズムも変わって
一緒に夕飯を食べる事がほぼなくなっただけ
互いのプライベートに干渉しない約束だったから、それについて何かを言う資格もない。
何かを言っていたら未来は変わっていただろうか。
「寝る時はベッドに行かないと風邪ひいちゃうよ」
琴子はコンビニのビニール袋をテーブルの上にどかりと置いて
座椅子に寄りかかる。ふぅ~と小さくため息を吐いて