【完】ボクと風俗嬢と琴の音
つまりは好きだという自分の気持ちを
客観的に見て気づいてしまったとて
その気持ちを押し隠していけば、側にはいれるということ。
余りに距離が近すぎて
毎日毎日楽しい感情が大きくなっていってしまって、いつか何らかの拍子で溢れ出してしまわないように
わたしは出勤時間と帰宅時間を変えた。
そうする事でしか、気持ちを押し隠す方法は思いつかなかった。
「ハル見て、雪うさぎ」
「じゃあ俺、雪猫」
不格好な雪うさぎと雪猫がマンションの前にふたつ並んでいた。
それは大切そうに寄り添い合ってるようにも見えた。
その後、昨日のリクエスト通り毛布とコタツを買いに行って
回転寿司を食べた。
寿司屋なのにラーメンやへんてこなお寿司を頼むわたしにハルは難癖をつけて
それでもお互いに積み上げたお皿の多さはわたしの方が多かった。
「あぁ…」
お寿司屋さんを出たら空に太陽が燦燦と輝いていて
すっかりと雪は溶けてしまっていた。
まるで最初から何もなかったように。
「ほら、言ったでしょ?」
あ~あ~。そう言って肩を落とすわたしの背中を叩いて
寒いなぁーと呟きながら歩き出した。
空の太陽をジッと睨みつけて思った。
雪うさぎと雪猫溶けちゃったぁ~って。