【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「うん、俺とは違ってアクティブなタイプの人間だから、琴子は絶対に仲良くなれると思う
今は札幌で栄養士みたいな事やってる給食のおばちゃん」
「イヒヒ。給食のおばちゃんいいじゃんか。美味しそう」
「すぐ食べるのに結びつける。
琴子はお兄ちゃんいるんだっけ?」
「そう、チビなお兄ちゃんね」
わたしがニヤリと笑うと、ハルはぶっと笑いを堪えていた。
「お母さんは普通の専業主婦で、お父さんは市役所職員。
お兄ちゃんは地元で教師をやっている。熱血教師」
「熱血教師ウケる。
公務員一家なんだな」
「そう。皆真っ当に生きてる人たち
あたしだけ異質」
異質。そう言った瞬間、ハルが目を見開いて、何か言葉を探している。
きっと、優しい言葉を探している。わたしが傷つかないように。その姿を見ると、いつだって優しい気持ちになれるんだよ。
「自分の事を異質なんて言うんじゃない」
「あはっごめんなさい」
「琴子が異質なら、俺だって歪だよ」
「ハルは歪んでな~いじゃな~い」
「俺はきっと、琴子よりずっと歪んでいる人間なんだと思う」
そう言ったハルの横顔は、どこか遠くを見ていたような気がする。
逆光で表情はよく見えなかったけど、きっとどこか遠くを見ているはずだ。