【完】ボクと風俗嬢と琴の音

ブー
ブー
ブー



「んあ……」



どれくらいの時間眠っていたのだろうか。
胸の中にいた琴音はすっかりいなくなっていて
外はすっかり薄暗くなっていた。

ゆっくりと起き上がり、バイブ音を刻む携帯の画面を覗き込む。
マナーモードにしていたって結局は起きてしまうではないか。

青白い画面に、ユカリと名前が表示されていた。
今日は電話の多い1日だ。



「ん~…もしもしぃ…」


「あー琴子ー?
寝てたー?寝てたねー?
メリクリー」


電話の先にガヤガヤとした音が聞こえた。


「だいじょうぶだよー
メリクリーどうしたの~?」


「いま、あんたの家の近く
優弥くんと一緒にいるんだけどさー
あんたに教えてもらった住所の近くまで来てるんだけどー」


「えー?うちー?何でー?」


「何でってーどうせ一人なんでしょー?サプライズ誕生日パーティーでーす。
あっ優弥くんどのマンションか分かった?」




まだ寝ぼけていた頭で整理していった。
サプライズ誕生日パーティー?
うちのマンション?
近くまで来ている?



それはやべえぇよ!!!!!




「ちょ、ユカリ」


「あぁ~あったあ~このマンションだね~
琴子~オートロック解除して~?」


寝ぼけていた頭が一気に冴えてきて
これは不味いとすぐに思った。
まだ夕方。ハルは帰ってこない。
鉢合わせする前に、ユカリたちを何とか帰さないと。
家に上げることももちろん出来ないから、何とかして外へ連れ出さなければ…



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