【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「わたしは……きっとあなたとならば上手くやっていけると…
嫌いでないのであれば…もしもあなたの言う通り合わないとしても…お互いに歩み寄って
少しでも可能性があると言うのならば…ふたりで未来を作っていけたら…と」
言いかけて
山岡さんの瞳からボロボロと涙が零れ落ちていた。
不謹慎にも、泣いていても綺麗な女性だと思った。
彼女は流れる涙を拭おうともせずに
真っ直ぐに俺を見つめていた。
「ごめんなさい。俺と山岡さんは…きっと無理だと思います」
「始める前から…無理と決めつけるのは…納得出来ません」
「それでも、無理です」
あぁ俺って何て駄目人間だ。
彼女との違和感を、前から感じていたはずなのに
それならば、早めに距離を置いておくべきだった。
うかうかクリスマスを一緒に過ごしてしまって、結局傷つけてしまって。
山岡さんは右手で頬に流れる涙を拭った。
けれども拭っても、拭っても、何度だって涙は溢れた。
「…他に、誰か好きな人が…いますか?」
認めてしまえば、もう一緒にはいられないような気がしていた。
だからこそ、ずっと気づきながら気づかぬ振りをしてきた。
「…はい、います…」
「もう…わたしの前から消えて…くだ…さい」