【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「今日が誕生日なんですか?」
「あぁ、まぁ自分じゃないですけど…」
「へぇクリスマスが誕生日って何か素敵ですねぇ。
ひとつにまとめないで、きちんと2つ用意してくれる彼氏さんなんて素敵っ」
「彼氏ではないんですけどね…」
「あらっ。誕生日プレートは何て書きますか?」
「たんじょうびおめでとう、ことこ…で」
「はい、大切な人の21歳が幸せな物になりますように―――」
ケーキ屋のお姉さんは笑顔で
俺へとケーキを渡してきた。
それを貰って、俺は走り出した。
早く――――
早く――――
もっと早く―――――
きっとあの家で待っていてくている。
だから早く。
寂しくないように
今、早く君に会いたいんだ。
「琴子っ!」
ハァ、ハァ、と息を切らせる程、全力疾走をしたのはいつぶりだったのだろうか。
急いでタクシーに乗って、家路まで急いで、マンションの中へ走って行って、エレベーターに乗って
そうしたら俺たちの部屋の前に人影があって
それでも俺は「琴子!」と叫んだ。
振り向いたのは、優弥とユカリさんだった。
それはそれは驚いたような顔をしていて
そしてその間からひょこっと顔を出した琴子は……
あちゃーっと言った感じで自分のおでこをペチッと叩いた。