【完】ボクと風俗嬢と琴の音
わたしとユカリは、寒空の下で並んで煙草を吸い始めた。
「もぉ…そんなに怒んないでよぉー…」
「怒ってねぇよ。拗ねてんだよ」
「すね…」
ユカリは空を見つめながら、唇を尖らせて煙草の煙を吐き出した。
「だってあたしに何も話してくんなかったじゃんか。
居酒屋で井上さんと偶然会った時も知らない人の振りなんてしちゃってさぁ~…
琴子とは何でも話せる友達だって思ってたのに…こんな大切な事秘密にされてたら…信用されてないのかな~とか思っちゃうじゃんか」
「ちが…それは違う!
ユカリの事信用してないなんて全然ない!
あたしはユカリの事大好きだし、親友だと思ってるし
ただ…ハルと同居を始めるってなった時…誰にも絶対に言わないでおこうって話になってて…
それに1年の期限付きの同居だったし…まさか勝手に来られるなんて思ってもいなかったし」
「勝手に来て悪かったわね。あんたが誕生日ひとりで寂しがってんじゃないかって、優弥くんと話しててさぁ」
「うん、だからそれもすごく嬉しかった…。
あたしは、ユカリも優弥くんも大好き…
ありがとう。ひとりぼっちで寂しかったよ。来てくれて、嬉しかった」
その言葉を聞いて
ユカリはフーっと煙草の煙を空へと吐き出した。