【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「なぁ?最近琴音俺に冷たくね?」
「ははっ。そんな事ないじゃんっ」
「俺が飼い主なのに…琴子の方に懐いてるよーなー…」
「小さいから仲間と思ってんじゃん」
ニャーと鳴いて、わたしの肩をつたって、ハルの肩へと移った琴音。
満足そうに宙を仰いでいる。
「あ!そうだ」
「ん?」
腕時計を見て、すぐに顔を上げてハルはいつものように笑った。
「間に合ったー。誕生日おめでとう!」
ハルの肩に乗っていた琴音もわたしをビー玉みたいな目で見つめて、何だか笑っているように見えた。
時刻は23時30分過ぎ。
わたしたちはホールケーキ、食べれるだけ、食べた。
胸やけになるくらい、食べた。
「そういえばあたしハルに誕生日言ったっけ?」
「ん~?」
「言ってないようなぁ。何で知ってるの?」
「言ってたよ」
「言ってったっけ?
ハルは誕生日いつ?」
「4月20日」
「わぁー忘れないようにしなきゃあ~
てゆーかあたしクリスマスプレゼント…買ってない」
「あはは、いーよいーよ」
「誕生日は期待してて!」
来年
4月20日。
何をしているんだろう。
まだ一緒にいれるリミットまである。
でもその何か月後にはお別れ。
1日1日近づくお別れ。
だいじょうぶ。きっと。
笑って言える。お別れ。だからその日までわたしは笑っていよう。
ハルが好きだって言ってくれたあの映画のヒロインのように
豪快に笑っていよう。