【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「琴子は派遣だよなぁー」
何となく誤魔化して言ってみたけれど、俺の話を遮るように優弥の顔を真っ直ぐと見つめた琴子は
やっぱり、笑っていた。
「あたしは、風俗嬢」
だから嫌いなんだ。
君にはいつも屈託なく笑っていて欲しいのに
そういう時にする、笑顔嫌いだ。
まるで無理に笑っているみたいで、そんな顔見たくないんだ。
「え?え?」
聞かされた優弥も困惑している。
やらかした、って顔をして
言葉を探している。
「だから風俗嬢。
別に秘密にしていた訳じゃないし」
「あー…そーなんだ…」
「ちょっと…優弥くん…」
「何か…ゴメン」
謝った優弥はしょぼんと肩を落として、本当に申し訳なさそうにしていた。
だから俺は、優弥が好きなんだと思う。
「やだ、何で優弥さんが謝んの?ほんっと止めてよー!
つーか皆空気暗くなりすぎっ。
あ、あたしドリンクバー持ってこようっと。ハルも持ってくる?」
「ん、じゃウーロン茶。
ありがとう」
「あ、あたしも持ってくるから一緒に行くよ」
そう言って、ユカリさんと琴子が部屋から出て行った。