【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「お、」
「ね?意外にいけるでしょう?」
「悪くはない」
「素直に美味しいって言えばいいのに~
んぅ~っポテトもおいひぃ~
大輝も食べなよー」
大輝はフッと笑いポテトに口をつける。
「琴子と一緒に食べると美味しいな。
お前美味しそうに物を食うから」
「それよく言われるー。でもほんとーに美味しいんだもーん!
人間はきっと食べるために生きてるのよ」
「俺は余り食事に対して興味がないんだが」
「大輝は美味しいもん食いすぎて舌が進化しすぎてるからだよ」
「そういうもんじゃなくて。
あぁ、いいな、ああいうの、いい」
そう言った大輝の視線の先に
家族連れの親子がいた。
仲良さそうに、夫婦の間には3歳くらいの男の子がいて、幸せそうに笑っている。
「ふふ、大輝でもああいうの良いって思うんだー」
「そうだな、当たり前に与えられなかった」
家族を見つめる大輝の目は、優しかったと思う。
わたしは、大輝の事が全然見えていなかったのかもしれない。
「お金持ちの家だから?」
「それもあるかもしれないけど
きっと母さんは、心の病気なんだと思う」
「心?病気?」
「俺があのくらいのガキの頃は、母さんに普通に殴られて
服の袖をぐいっとこうな、持ち上げられて
泣いていた記憶しかねぇな」
「それって」