【完】ボクと風俗嬢と琴の音

虐待じゃん。と言いかけて止めた。
だって大輝はその話を笑ってするから。


「さすがに俺に力で敵わなくなってからはそんな事はなかったよ。
けど、小さい頃は殴られてたなー。呼んだら来なかったとかってそんな小さな事で
だから子供は親の言う事を聞かなかったら殴られるもんだと思っていた。
何度もごめんなさい、ごめんなさいって母さんの顔色ばかり窺って生きてきた。
でも言う事を聞いてりゃ何でも好きな物は与えてくれたから」


「そんなん普通じゃないんだよ。
そんな悲しい事、笑って言わないでよ」


「はは、何で琴子が悲しそうな顔すんの?」


「だって小さい子供の中で親は全てなんだよ……」



わたしの中で

お父さんとお母さんがいて、お兄ちゃんがいて
優しい思い出で溢れている。
悲しくて泣いちゃう日もあったし、怒られて拗ねてしまった日もあったけど
いつだってわたしの事を考えてくれていた。
家族ってそういうもんだよ。



「しつけと虐待の違いが分かんないって
だから、テレビとかでも虐待のニュースが沢山あるだろ?そうやって子供を殺す奴は必ず言う。
あれはしつけだったって
大人になって分かった。母さんは心の病気だったんだって。今も生きてはいるけど、入退院を繰り返してる」


「それでも……
小さい子を殴ったりなんて許せないよ…」


「別に俺、母さんを恨んじゃいない。

けど、きっと俺は自分の子供が出来ても同じことを繰り返す人間になるんだろーなーって…
ほら、虐待されて育った子供って、連鎖するって言うじゃん?
だから俺は結婚したとしても絶対に子供を持たない。父さんは跡取りの俺がそんな事を思っているなんて聞いたら怒ると思うけど
絶対に子供だけは持たない」


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