【完】ボクと風俗嬢と琴の音


「何でーーー…
何でそんな悲しい事を言うの?」


「ハハ、未来の不安の根は最初から摘むんでおく」


「だってあなた優しい人じゃない…
思いやりのある、人じゃない…
あんな酷い事をしたあたしに優しくしてくれて
今日だってこうやって文句を言っても付き合ってくれたじゃない…
大輝はそんな人間に絶対にならない…」


「琴子みたいな人間が側にいてくれたら、俺もそういう人間にならずに済むかもな」



大輝はどこか遠くを見て、言った。

だからぎゅっと胸が切なくなる。


「そんな下らない話より
ほれ、福袋」

大輝は、戦利品の福袋をこちらへ渡した。

「そんでついでに
こんなんあったから」


「え?何これ」


「にゃんこ福袋だって。
お宅の家の可愛くない猫へどーぞ」


「ちゅーる詰め合わせっ
うわぁ、ありがとう。
たまに食べさせるとすっごく喜ぶんだよねー
これで1年間持ちそうだぁー」


大喜びするわたしに、大輝はやっぱり優しく笑うから
あなたはそんな人じゃないと、何度でも伝えたくなる。

あなたは、優しい人。きっと、絶対。


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