【完】ボクと風俗嬢と琴の音


「それにしてもなんつー荷物……
何個買ってんだよ?」


「ミスドとーカルディとー
人気なんだってぇー
後、スタバ!」


「食いもんばっかじゃねぇか。
で、そっちのでっけーのは?」


「これは…」


メンズのショップの福袋。
ハルに買っていこうと決めていた。


「あぁ、あいつは幸せ者だな」


「別にそんなんじゃあ…」


「琴子にとって井上晴人はどんな存在?
俺にとってはただのでくの坊のボーっとした男ってイメージなんだけど」


「ハハ、でくの坊。それは確かに。
あたしの中のハルはね」





ハルは

ハルは

まるで温かい木漏れ日のような

春の日の、柔らかい日差しの中で

うたたねをしてしまうような

温かくて大きくて

どう足掻いても、わたしの手の中には掴めないようなどこか遠くにいる人。




「太陽……」


「ハハ、ありがち」




「でもぉ~…
琴音はその太陽よりもずっと高いところにいるような希望だから
神様?」


「あの目つきの悪い猫が、か」


「何だよもー!可愛いんだからー」


「分かってるつの。
足手まといの動物を愛するのは人間の勝手だ。

そっかぁ、太陽かーいーなぁー太陽。俺も太陽なんて言われたいもんだ」


「大輝だって誰かの太陽になれるよ」


「君だけの太陽になりたいものだ」



そう言った大輝の鼻をつまんだら
大輝は変な顔をして「やめろ」と言った。
その顔が余りにも変な顔だったから、思わず笑った。


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