【完】ボクと風俗嬢と琴の音
1月が過ぎてすぐに2月になって3月なんてあっという間に過ぎ去って
4月になって25歳になって
季節が一周してしまったら、琴子のいない夏が始まる。
それならば1日だって無駄に出来ないって分かってるのになぁ……。
「珍しいんですね、飲み会に参加なんて」
同期飲み会の席。
何故か山岡さんまでいて
あれから挨拶も交わしていたし、会えば他愛のない会話もしていた。
「あぁーまぁ…」
山岡さんは遠慮なくどかりと俺の隣に腰をおろして
ビールジョッキをぐいっと飲み干した。
「あァ!山岡さ~ん、何で井上の隣なんかに~」
情けなく嘆き声を出す早瀬を、山岡さんはキッと睨みつけた。
「わたし、井上さんとお話しがあるので」
「え~山岡さ~ん、そんなつれない事言わないでよー」
「早瀬さん」
「は~い」
「邪魔です」
きっぱりと言い放ったら、山岡さんはビールをもう一杯おかわりした。
思わずブッとふきだしてしまった。
「ふっ……何か山岡さん、キャラ変わった?」
今日は余りふわふわしていない。
いっつも山岡さんはどちらかというと女の子らしい恰好ばかりしていたのに
今日は珍しくパンツスタイルだし、綺麗に巻いてあった髪もストレートだ。
俺は山岡さんがビールを飲む事だって知らなかった。
ムッとしたような不機嫌な顔を俺へ向ける。