【完】ボクと風俗嬢と琴の音
何この人。
誰だよ。
趣味ではないと言いながら、ペンケースにつけちゃって
俺の知っている山岡さんより、ずっと可愛いじゃないか。
ふん、と顔を背けていた山岡さんが下を向いて眉毛がへの字に下がっていく。
「あなたの事だって…全然好きじゃなかった…
晴人くんは良い大学を出て、将来有望株だからちょっとちょっかい出そうってそんな軽い気持ちだった」
「有望株?」
自分を指さしたら、山岡さんはこくんと頷いた。
「わたしのよーな一般職の女は将来いかに良い男と結婚出来るかとかしか頭にはありません。
どうせバリバリのキャリアウーマンになんてなれやしないし
そうであるのなら日々仕事のスキルを上げるというよりかは
日々美しく綺麗であることが重要になってくるのでーす」
「なるほど」
「ね?わたしって嫌な女でしょう?
別にご飯行ったりしてたのだって晴人くんだけじゃないし
他の男にもちょっかいだして」
「いや、それは言う程嫌な女でもないよ
少なくとも、前の山岡さんよりかはずっと仲良く出来そうだ」
その言葉に、山岡さんは大きな目をぱちくりさせた。
「そういう風に自然にしている方がずっといいよって話」
首を傾げて笑って
またしょんぼりとした顔をする。
片手にはビール。
「もっと早く気づけていたら…何か変わったのかなぁ……
わたし達の関係も…」
いや、変わりはしない。だろう。