【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「あらら、これは
井上晴人くんと
えっとー君は確か…美麗ちゃんだっけ?」
「はーい、業界人飲み会で来てた頭の悪そうな顔だけ可愛い山岡美麗でーす」
山岡さんは不愛想な顔で自虐的に言った。
その横で優弥が俺と山岡さんを交互に見て「誰?誰?」と聞いてきた。
「あぁお久しぶり。ってこの間会社の受付であったよね?」
「あー気づいてましたかぁー、マズっと思ってたけど
もうまぁどーでもいーんでぇ」
「おい、晴人!誰だよっ俺だけ話についていけねーよ」
話に入ってこれない優弥は寂しそうに俺の肩を揺さぶる。
「西城、大輝です」
にこりと優弥へ向かって彼は言った。
やっぱり完璧な男だ。
「西城ーーー?西城って西城グループのむぐ」
「うるさい、佐伯さん」
優弥の口を、山岡さんが塞ぐ。
「西城さん、琴子は元気ですか?」
「はぁ?俺が知るか。正月以来会ってねぇよ」
正月以来会っていない。その言葉を聞いて、情けない事に安心してしまっていた自分がいた。
やっぱり俺は大馬鹿野郎でありながらクソ野郎でもあったわけだ。
「何故俺に聞く?
お前の方が知ってるんじゃないか?」
「………」
「お前みたいな男でも、喧嘩はするんだな」
俺の口元を見て、西城さんは言った。
それに触ろうとして、俺は思いっきり振り払った。