【完】ボクと風俗嬢と琴の音
楓は別れ際
もうホストには来るな、と言った。
ホストらしからぬ発言だ。
僕たちの仕事は女性を幸せにすることだ。と
ひと時でも幸せを感じてもらう時間を提供することだって
でもここに君の望む幸せはきっとないって。
わたしはきっと優しい人たちに包まれている。
その優しさをいつだって見落としてきたのではないのだろうか。
自分は強いと言い聞かせて、いつだって平気だって自分に呪いのように唱えて
「うわ、お前またここいんのかよ」
「だってぇー今日泊るところないんですものー」
事務所に行くと、珍しく店長が電話番をしていた。
ここ最近は事務所に泊まる事も多くなっていた。
あれから2週間ほど経ってしまったのだろうか。
無駄にはしてはいけない時間。だと思ったのに
もう2月を迎えようとしていた。
時間は僅かにしか残されていない物と知りながら
「ここはホテルじゃねぇぞ」
「ではー料金を払いますぅー
それかー体で支払いますー」
「冗談。大輝に殺されちまう」
店長は仕事のディスクにどかりと座って、悪戯な笑顔を向けた。
しかし風貌はやくざかチンピラか。