【完】ボクと風俗嬢と琴の音
胸を、張れているのか。
多分
張れてない。
だからたとえ誰かに馬鹿にされたって軽蔑されたとしても
胸を張れていたのなら笑い飛ばす事が出来たのだろう。
けど
それが出来なかった。
「ハル…会社の飲み会で
あたしの事庇ってくれたでしょう…。
ユカリから聞いた。
早瀬…あいつに歌舞伎町で会った時しつこくされてめんどくせーって思って
仕事は風俗嬢だって言ってしまった…。
風俗嬢と一緒にいるなんて周りに知られたらハルだって周りから良い顔されないよね。
本当にごめんなさい」
「いや、それはいいんだ。俺はどう思われたって
あのさ、俺琴子と一緒にいるの楽しいよ。
すごく楽しくて、そこに職業とか年齢とかそういったものは大した問題ではないと思っている。
だから…約束の日までは一緒に琴子と琴音と楽しく生活していきたいって思ってる」
「あたしもだよ……」
ハルは約束の日以上の未来は約束をしてくれなかった。
そんなもの、分かっていた。
契約上の関係だったから
それでもハルが好きだったから、けれどその想いが伝えられないから
だからせめて別れの日が来るまで
いつか笑ってさよならを言える日まで
その時間まで共に笑い合って、生きていきたい。