【完】ボクと風俗嬢と琴の音
そして掴んで気づいた。
「わぁ!ゴメン!」
何馴れ馴れしく触ってんだよ。
琴子は少し前を歩いて
「痩せたかな~」と言いながら、自分の腕を上にあげたり下にあげたりしている。
多分顔が真っ赤だと思うから、琴子が前を歩いてくれていて、良かった。
好きだと認識してしまえば
今まで何でもなかった事さえ、戸惑ってしまう事が多くて
心臓がまるで自分の物ではないようなくらいドキドキと音を刻んで
体の体温が一気に上昇していく。
意識してしまう。
そして、触れるだけじゃなくて、抱きしめたくなる。
キスをしたくなる。それ以上も。
自分の気持ちを認めてしまえば、自分の欲求さえも認めざる得なくて
でも自分の欲望を全て琴子へぶつけてしまえば、きっと傷つけてしまう結末。
人間って欲張りな生き物だよ。
そして、こんな自分の中にも当たり前にそういった欲望があると思うと嫌になる。
琴子を汚いなんて思わない。
それどころか
俺にとってはそれは神聖な物で
触れてはいけない程大切な宝物のようで
壊したくなかった。
客のように俺の中にも欲望があると知ったら
琴子はきっと悲しい顔をすると思うから。