【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「一緒に住んでるのにぃ?
同棲してるのにぃ?」
「ちょ、ぶぶ。山岡さん、その顔ウケる。やめて」
そう言ったら、山岡さんは両頬をおさえて満面の笑みを作った。
おぉ…見事な作り笑い。
「うん。付き合ってないからね」
「何それ?
それっておかしい。
付き合ってもいないのに一緒に暮らしてるなんて」
「まぁ元々お互いの条件が合って
一緒に暮らし始めたって感じだから
同棲じゃなくて同居だし」
「それでも変なの。だって晴人くん、彼女の事好きなんでしょ?」
「そうだね、でも琴子は俺の事何とも思ってないから
恥ずかしいけど、片思いなんだ…」
「そーなの……
でもそれってすごぉーく切なくないですか?
だって大好きで一緒に暮らしているのに近くにいるのに…
恋人じゃないって…」
「俺は琴子が笑って楽しく生活してくれるならそれでいい」
「うっわぁ~綺麗ごと~」
「だからその顔やめ。
山岡さんって案外面白いね。
前の可愛らしい山岡さんも素敵だったけど、そうやって自然にしてるところはもっといいと思う」
山岡さんは俺を見上げて
困ったような顔をして、笑った。