【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「おいっ、今チビだと思ったやろ?!」
それは言いがかり。
確かに小さいとは思ったけど
それは違くて、なんてこんなに愛らしいと、思ったばかりなんだか
琴子はぷんぷんとしながら、お皿をテーブルに並べる。
ご飯と、そぼろのようなハンバーグと、何が入ってるかよく分からない何故かドロッとしているお味噌汁。
二つ分のお皿。並んでいる事さえ嬉しいのに、何故か琴子は不機嫌なまんま。
「今、不味そうと思ったやろ?!」
だからそれは被害妄想。
琴音がニャーと尻尾を立てて近寄ってきて
テーブルに乗っているお皿の匂いを嗅いでツーンと顔を背けて
少し離れたところで腰をおろして、ハァーとため息のような物を吐いた。
「猫ってため息吐くよね」
「何や琴音まで」
「いや、見た目はこれだけど、案外美味しいかもしれないし」
そのよく分からない肉の物体を恐る恐る口にいれる。
琴子は手を付けずに、じいっと俺の箸を運ぶ姿を見つめていた。
おまえ、俺に毒味させようとしただろ!
「あれ?」
口に入れたら、案外美味しい。
形はアレだけど、ちゃんとハンバーグの味するし
「意外に上手い」
そう言ったら、琴子は口を大きく開けて
両手を上げて「わーい!」と喜んだ。それはとても大袈裟に
でも琴子って喜びを表現する時はいつだってこんな感じだった。
昔からそれが嬉しくて、琴子が喜ぶ顔が見たくなったもんだ。