【完】ボクと風俗嬢と琴の音

何より夜型の生活だったわたしに
朝から生きる事を教えてくれたのだ。
朝の昼の太陽の陽の光りがこんなに気持ちの良いものなのだと



手にしたお金を、意味を持たない物に使っている事より
それはわたしの中でずっと気持ちの良い事だった。




ハルと暮らし始めてから
風俗で働いたお金はほぼ貯金してきた。

この貯えがあれば、昼の仕事を始めて引っ越しをしたとしてもやっていけそうだ。
今度住むところは狭くても良い。陽がよく当たって、毎日は掃除出来なくても、人として暮らしていける家であるのならばそれでいい。


もうホストにも行かないし
ブランド物も欲しくないのだから


あなたと出会い、自分が本当に欲しかった物に気づけたから。





珍しく平日休み。
スーパーに来たら
親子連れや家族で溢れていて、何だか幸せな気持ちになれる。

最近残業続きのハルへ夕ご飯を作っているのも密やかな楽しみである。
料理の毒見やって言って食べさせているけれど
自分の作った料理を、大好きな人が美味しいと笑って食べてくれる事は、大きな幸福に値する。


日常の中に小さな幸せが沢山転がっている事を教えてくれたのも
紛れもないハルで
わたしは人を、初めてこんな風に好きになれた気がした。
それはとても暖かい感情だった。自分の中にこんなに暖かいものがあったのかと思う程。


でもそれが暖かくあればあるほど、切なくなる。寂しくなる。


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