【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「うん。うまい」
「マジ?!」
「えーマジこれ美味しいんだけど。
え~?なんかぐんぐん上達してない?」
「うっそー、もしかしてあたしって料理の達人?」
「いや、本気でうまい。
大根と手羽の煮物なんて…よく煮込めたな?」
「…馬鹿にしとる?」
大根と手羽の煮物。
余った大根葉っぱでのお味噌汁。
ご飯。
品数は全然少ないけど
料理の時間は相当かかっている。不器用なのだとは思うけど、料理初心者としては中々。
自画自賛してしまうほど。
ハルは「うまいうまい」と何度も連呼して、ニコニコしながら鍋にあった煮物を全部たいらげた。
そういうところ、好き!…小食のくせに。
無理して食べたら、また明日胃薬のお世話になるはずなのに
ハルは底抜けの優しさを持っているような人なのだ。
それは出会った頃から知っていた。
「お皿洗いもあたしがするっ!」
食べ終わったお皿、ハルがキッチンへ持っていこうとしたけど
それを阻止。
「いや、俺が洗うよ。ご馳走になったんだし」
「だめ、あたしが洗う!」
「い~や、俺だね!」
お皿の取り合い、それをしているのもこんなに楽しい。
結局ふたりでキッチンに並んで洗う事になったのだけど
わたしが洗って、ハルが拭く。そんな小さな事でも幸せなんだよなぁ~…。
こんな小さな幸せがある事も知らなかった。