【完】ボクと風俗嬢と琴の音
ちくり。
それは針をさすような痛み。
ハルの幸せを願っていたから
あんな女は駄目だと言えた。
でもそれじゃあ、言えなくなっちゃうじゃない。
あの人がどんな人かは知らない。でもあの人が本当に嫌な女じゃなくなっちゃったら
わたしは勝てるところがどこも見当たらない。
良い人であるのならば、ハルを本気で好きになってしまったのならば
応援せざる得ないじゃないか。
「1回振っても、もう1回やり直せることもあると思う」
「俺と山岡さんがぁ?
いや、ナイよ。ナイ」
「そんなん分かんないじゃんか。人は変わっていくものだし」
ハルと出会って、わたしが変わったように
山岡さんだって変わっていくかもしれない。
「当分、恋は出来そうにない…」
「なんだ、それ。まるで失恋した人みたいなこと言うな」
「ふああぁ~眠。
そろそろ寝るか。お、琴音俺と一緒に寝るか?」
ハルが自分の部屋の扉を開けて、おいでおいでと琴音を手招きすると
リビングで琴音が硬直したままハルを凝視する。
見つめて
そしてサッとわたしの部屋へと入って行った。
「あはははははっ振られてやんのー?」
「ひど…。最近琴音…琴子の方ばっかりで眠ってない?
俺寂しいんですけど
琴音と一緒に寝たい~!」
「あらぁ、じゃああたしのベッドで一緒に寝る?」
その言葉に、ハルの動きがぴたりと止まった。
さっきの琴音のように硬直して動かなくなった。