【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「なんだ、これ」
2月終わり。
大輝から連絡が入って、たまたま仕事終わり会う事になった。
どこにご飯行く?と聞かれたので
希望したファミリーレストランで
ドリンクバーってなんだ?と聞いてくる大輝。
ガチで一般人が普通に経験するであろうことをこの人はしてこなかったんだ。
それにしてもファミリー連れが多い事。
想像しい店内で、ハンバーグを食べた大輝は「悪くない」と偉そうに言った。
そして差し出した物は
綺麗にラッピングされた
バレンタインチョコレート。
時期外れかよ!とツッコミは置いといて
実は14日にハルに渡すつもりだったのだが、失敗に失敗が重なり
結局上手に出来たのは、2月も終わる頃だった。
大輝は丁寧にラッピングを解くと
それを見て「ゲッ」と言った。
生チョコ。
見た目は汚いけど、中々上手く出来たと思ったんだけどな~。
「日々のお礼もこめて バレンタインです。
しかも手作りでぇす」
「毒でも入ってるんだろうか」
大輝は訝し気に何度も何度もチョコレートを手に取り見ていた。
「自分で食べてはみたんだけど食べれば食べるほど味がわからんくなる。
そもそもチョコしかはいっとらんはずだから不味い訳ないんやけど」
恐る恐るチョコに手を伸ばして、口に入れる。
「う………」
そして苦しそうに胸をおさえる。
「え?不味い?!やばい?」
「旨い。見た目はアレだけど味は旨い」
「マジでー!良かったぁ。これでハルに渡せるしー」
「やっぱり俺は毒見係かよ」
文句を言いながらも
何個も何個も口へ運んでいく。