【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「あま……」
手についたチョコを舌で舐める。おぉセクシーではないですか。
と、いう冗談は置いといて
どうしてわたしはこの人を好きになれないんだろう。
わたしの世界の中にはハルしかいないんだろう。
わたしを好きだと言ってくれる、この人の側にいれたら楽なのに
高級タワーマンションに住んで、好きな物を好きなだけ買ってもらい
それは、前まで望んでいた生活だ。どこまでも誰かに甘やかされて、自由に生きる。
でも、それはもう、わたしの喜びではなくなってしまったんだ。
「俺、甘いの大嫌いなんだけど?」
空っぽになった箱を見て、言った。
「えぇ?じゃあ無理せんで良かったのに」
「好きな女からの手作りチョコだ。
どんな一流パティシエの作ったチョコより価値はある」
だからさらりと
この人の中にある優しさはもう十分知ってる。
なのに、どうしてわたしはハルじゃなきゃ駄目なんだろう。
「あの男がそんなに好きか?井上晴人」
大輝の方がずっとかっこいいよ。
それに優しい。
お金もあって、大企業の御曹司で
そんな人に好かれるなんて、まるでシンデレラストーリ。