【完】ボクと風俗嬢と琴の音
誰だってシンデレラになりたい。
ガラスの靴は欲しい。
けれど、さ
ぎゅっと両手を握りしめて
自分の体いっぱいに熱が集まってくるのを感じてくる。
何でこんなに好きなんだろう。
あの人はどうしてここまでわたしの希望なんだろう。
「好き――――」
「だからそんなに好きなら素直に好きって伝えればいいだろが」
「無理」
「だから、何で」
「関係を壊したくない…」
「でもさ、井上晴人、あいつさ……」
何かを言いかける大輝の真っ直ぐな瞳を見つめると
ぷいっと逸らした。
「何?」
「何でもねぇ、自分で考えろ」
「なんだよ、ケチ。」
「俺がケチならお前はちょー無神経だ。
井上晴人へ渡すチョコを、俺に毒見させてから渡すなんて
かなり無神経だ」
「そうね、あたしって罪深い女よ。
でも確かにこれは義理チョコだけども
大輝には本当にお世話になってるし、感謝の気持ちも伝えたかったんだもん。
新しい家だって探してくれてるし」
「おお、どーだ?琴子が望むような物件ばかり探しておいたけど」
「あんなん家賃が払えないって
もっと一般的なところでいいのに」
「じゃあ不動産屋に掛け合ってみる」
「む~り~、何か自分の権力振りかざしそうだし…」
「使えるものは使っておかないとな?」
「だからそういうのが嫌だって言ってんだよ。
あたしは自分の力で生きて行きたい」