【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「有名ブランドのお高いチョコじゃん。
全然義理じゃない」
「でも義理って…」
「ほんっとハルは女ごころが分かってないなぁ~。
それにしても山岡さんも案外素直じゃないね。
あ、あたしのは超義理なんで、お返しとか全然いらんからな。
最近料理作りも楽しくて、お菓子作りもしたくなっただけだから、だからそれは試作品なわけ」
きっぱりと義理と言い放つ。
山岡さんに言われた時は何も感じなかったのに、琴子に言われたらがっくり来る。
ただの義理チョコ、そんなのは分かっている。
でもはっきり言われるのってこんなにダメージ受けるもんなんだな。
「そういえば、この間お母さんに電話した」
少しだけ俯きながら、今夜作った鯖の味噌煮に手を伸ばしながら話し出す琴子。
あ、うまい。
やっぱ味付けが上手なんだよなぁ~
俺も元々料理はする方だったけど、やっぱり男の料理というかなんというか。
「ずっと連絡しとらんかったんやけど
久々に電話したら、嬉しそうにしとった」
最近の琴子は、ぽろぽろと方言が出てくる。
ここが、彼女の安心する場所になっていればいいのだが