【完】ボクと風俗嬢と琴の音
でもそれは
とても切ない。
こんな切ない想いがこの世にあるなんて、知らなかった。
誰かを好きになる事はこんなにも切ない。
「で、良い物件は見つかりそう?
西城さんにも探して貰ってるんだろ?」
西城さんの名前を出したら
お互いに気まずくなること。もうそれはしたくなかったし、不用意な言葉で琴子を傷つける事ももうしたくなかった。
だから、出来るだけ自分から名前を出して、気まずくない雰囲気を作る。
前みたいに喧嘩になるのはこりごりだったから。
喧嘩して、また仲直りして
それを何度も繰り返してもまた一緒にいれる。
喧嘩もスパイスになるなんて言えるのは恋人同士の特権であり
恋人でもない俺たちの場合は、また互いに嫌な思いを繰り返すのみだと学習した。
「あの人は全然だめ。
だってぇーありえない金額でありえない良い物件を探してくるんだもん。
金の力でとか、実は家賃半分負担してもらってたとかってオチは絶対に嫌だ」
あぁ、悲しいかな、俺と西城さんの違い。
彼は彼女にそこまでしてあげる財力があるが
俺にはナイ。
ナイナイだらけで嫌になってしまうよ。
ただのサラリーマン。
もうすぐ社会人3年目の若造。
ただの平社員には出来ない事でも、大企業の御曹司にならばしてあげられる事は沢山ある。
つーか、俺にしてあげられる事は、大抵西城さんは全部してあげる事が出来る。