【完】ボクと風俗嬢と琴の音


「あ、山岡さん!」

3月14日。
帰り際、ギリギリセーフ。
残業がなくって本当に良かった。

年度末という事で最近はずっと残業続きで忙しかった。
自動的に帰るのが遅くなって、琴子は毎日のように夕飯を作ってくれていて、それは逆にラッキーだったのだけど。
食べれるものなら何でも良かったけど、琴子の手料理は正直嬉しかった。




「あ、晴人くん、おつかれさま」

退社しようとしていた彼女の手には大きな袋があった。

「あぁ、これ?
何か…義理でチョコくばってたら…お返しにって沢山もらったの。
正直困ってるんだけど…ほんとーに義理だしさぁ!」


「アハハ、そりゃ社内の男は山岡さんからチョコ貰ったら義理でも嬉しいしょ
重そうで申し訳ないんだけど、これ俺からのバレンタインのお返し」


袋に入ったそれを差し出すと
山岡さんは明らかに迷惑そうな顔をした。


「何これ!重ッ」


中身を開けると、そこにはビール6缶パック。


「ビールは好きだとはいったけども。
これはちょー迷惑ナンバー1なお返しね……」


恨めしそうにじとーっと俺の目を見てくる山岡さん。
やっぱり前と全然キャラが変わっている。

山岡さんが持っている荷物を全部ひょいっと彼女の手から奪う。

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