【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「家まで送っていくよ」
「あら嬉しい。ついでにご飯も連れて行ってくれたら嬉しいんだけど?」
満面の笑み。
これって高級チョコだよ!琴子の言っていた言葉を思い出した。
それに対してお返しがビールってなぁ…。
「うん!おっけ。
今日は山岡さんの行きたいお店にお付き合いいたします。
ホワイトデーのお返しもこめて」
そう言ったら、彼女はニヤリと笑った。
前までは天使の微笑みだったくせに、今は悪魔の笑みにしか見えない。
けれど今の山岡さんの方がずっと話しやすい。
「つーか、この店でいいの…?」
「いーの、いーの。本当はこういうお店だーいすきっ」
山岡さんが行きたいって言ったお店は、全然普通。大衆居酒屋だった。
大将!生ふたつ!と大声で叫ぶ山岡さんは、嬉しそうで
やっぱこの人、こういう風にしてる方がいいなぁーって。
「あ、ラインしていい?」
「どうぞ」
琴子にラインを送っておこう。
夕ご飯の準備しちゃうかもしれないし。
「琴子さんに?」
「うん、最近あいつ料理にハマってて、よく毒見という名の味見をさせられるからさ」
「へぇ、わたしは料理出来ない」
「え?!」
顔を上げて、心底驚いた顔を見せた。
その俺の顔を見て、山岡さんはじろりと睨みつけながら、ビールのジョッキを煽る。