【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「こういった女の子らしい事すごく苦手で…
実は掃除や洗濯もすっごく嫌いで
はぁ~~…だから尊敬しちゃう。晴人くんって絶対わたしより家事出来るよね~…」
はぁ~~~と大きくため息を吐いた山岡さんの視線の先。
そこには、優弥さんと笑ってるハルの姿。
真っ直ぐに見つめる大きな瞳。
嫌だ……。
この人まだきっと、ハルの事が好きだ。
「でも…山岡さんは…女の子らしいですよね」
「えー?どこが?」
「何か全体的にふわっとしてて
柔らかくて華奢な感じで」
「えーアハハ、全然じゃない?
それに琴子ちゃんの方が華奢だし」
「あたしのは華奢っつか、チビなだけなんすよ
ハルと並ぶと特に小人だから、ちょ~馬鹿にするんですもん」
「確かに琴子ちゃんと晴人くんが並ぶと、アハハ~想像しただけでもウケる~」
「山岡さんは華奢なのに身長は結構あってうらやまし~
顔も、可愛いし…」
「可愛くなんかないよ。それにわたしは琴子ちゃんが羨ましい。
当たり前に晴人くんの隣にいる権利を得られる琴子ちゃんが羨ましい。
いいなぁ…琴子ちゃんになりたい…」
いま
わたしの心の中、汚い気持ちでいっぱいだ。
山岡さんはきっと悪い人ではない。
過去に港区女子つって遊んでいた事は事実かもしれないけれど、今ハルを見つめる瞳は誠実そのもので
だからこそ汚い気持ちでいっぱいになるんだ。
今の山岡さんは悪くない。そう言っていたハルの言葉。
ずっと同じ会社で働いていくふたり。
今後、ハルと山岡さんの間に何があるかなんて分からない。
ふたりの関係がどう変化していくかなんて、もうこの先わたしは見守る事さえ出来ない。