【完】ボクと風俗嬢と琴の音
ニコニコと子犬みたい。
ハルとはまた違った、癒し系。
1月のカラオケ以来、ちょっと気まずくなっちゃって会う事はなかったけど
優弥さんは人懐っこい笑顔を見せて、今日会った時も普通に接してくれた。
わたしが風俗嬢だって分かっても、前とは変わらずに接してくれる。
改めて、ユカリの彼氏がこの人で良かった。
あっちーと言いながら桜の下でティーシャツの首元を仰ぐ。
「あのさ、琴子ちゃん」
「え?」
「この間はごめん…」
「あぁ気にしないで下さいよ。
そういう目で見られる職業ってのは自分自身が1番分かってますから」
「いや、違うんだ。あれは驚いたっていうか、びっくりしたっていうか…
別に琴子ちゃんは琴子ちゃんだからってハルが言ったのを聞いて、確かにって思ってさ。
だから俺、琴子ちゃんに対して変な気持ちになったわけじゃないんだってことを伝えたくて
だからッ!あの時は本当にすいませんでしたッ!」
優弥くんは真剣な顔をして、深く頭を下げた。
思わず笑ってしまう。
琴子は琴子だ、って言ってるハルの顔が思い浮かぶ。そうしたらもっと優しい気持ちになった。
「アハハハハ~ッ、全然気にしてないんだからー。
逆に普通に接してくれてありがとう、嬉しいよ。
それにあたし、風俗はもう少しで止めようと思って」
そう言ったら更に驚いたように優弥くんは顔を上げた。