【完】ボクと風俗嬢と琴の音

気まずくなったら、俺との距離をあけて
避けることがデフォらしい琴子の性格。
分かっちゃいるんだ。中々素直になって謝れるようなタイプではないって。
俺が折れる事が1番良いんだって…。
でも大切な人だったから、特別な人だったから
曖昧にして、終わらせたくない。
それが気まずい、ただの何も生産性のない喧嘩だったとしても。


俺にとって、君はどうでも良い人なんかじゃ全然なかったのだから。




「うわぁ、ひでぇ顔だなぁー…」



朝から俺の顔を見るなり優弥が「うわぁ」とドン引きしてきた。
考えすぎて行動に移せないのは、営業においても悪手である。
やってみての失敗であるのならそれはいつだって勉強だし、やらない後悔よりやってからの後悔の方が後味だって良いってもんだ。
分かっちゃいるんだけど。
頭で分かっていても、行動に移すのとそれじゃあそれはまた別の話で。



「午前中はA店のスーパーに行って新製品の営業。
午後からはコンビニ本部に行って打ち合わせしてきまーす」



頭の切り替え。
ただでさえ仕事ではうだつが上がらないのに、そこに私情を挟んじゃいけないだろう。


< 455 / 611 >

この作品をシェア

pagetop