【完】ボクと風俗嬢と琴の音
俺って…ほんと…。
クスクスと笑い声が聞こえて、顔を上げたら、そこには山岡さんが立っていた。
「何をやっているの?」
「あ、お疲れ。いやぁ~、ちょっと考え事をしていたら頭をぶつけて」
「晴人くんは相変わらずね。
大丈夫?怪我はしていない?」
山岡さんは少しだけ背伸びして、華奢な指先で額をそっと触る。
前まではこんな彼女の優しさに喜んで、少しでも触れられるとドキドキとしていたはずなのに…。
「冷やしておいた方がいいよ。はい、冷えピタ」
笑いながら、山岡さんは鞄の中から冷えピタを取り出し、こちらへ渡した。
ぎゅっと握りしめると、それはほんのりと冷たくて。
「いつかもこういう事あったと思う。
あれも考えごとしてて頭ぶっけて、そしたら山岡さんが絆創膏をくれたんだよね。
山岡さんって本当に女の子らしいね」
「まぁ~こういったアイテムはマストかな?
男って単純だから、パッと絆創膏とか出せちゃう女の子にときめいちゃうのね」
「そういう事を言っちゃ、意味ないじゃん」
「晴人くんには本性がバレちゃってるから、飾っても仕方がないっていうか
晴人くんはそういうのに騙されないでしょう?
だからわたしの事好きになってくれなかったわけですし」
意地悪く笑う、山岡さん。
けどさ、本性のバレちゃってる俺の心配をしてくれるって
それって本当の優しさな訳じゃん?
やっぱりいい子だと思う。