【完】ボクと風俗嬢と琴の音
気ままなストリートキャット。
俺の人生の中で絶対に関わりのない人種。
それが彼女に対する、第一印象。
「おい、井上!」
早瀬に促されて、自己紹介の順番が回ってきた事に気づく。
早瀬…めっちゃ俺を睨んでいる。 何でこんなに敵対心バリバリなのかは知らない。
「えっと、井上晴人です。…今日はよろしくお願いします…」
さっきの女の子の事を言えない気の利かない挨拶。
「それだけかよー!」と早瀬は煽るように言ってきた。
何はともあれ一通りの自己紹介が終わって、皆でグラスを持って乾杯をして
地獄のような長い時間が始まってしまうのだ。
「なぁ、優弥」
話をかけると、隣にいたはずの優弥は既にいなかった。
とっくの前に移動していて、キャバ嬢と言っていたユカリさんに話をかけている。
…お前ってマジで強者だよ。
でも案外、はたから見たらお似合いだな。
ユカリさんもユカリさんで笑顔で楽しそうに話している。 …でもキャバ嬢として嫌な人の前でも演技をして楽しそうに喋るのはお手の物なのか。
別に友人として誰と付き合ってもいいのだけど、お前は山岡さん狙いだったんじゃないのか?!
その山岡さんは山岡さんで、早瀬と楽しそうにしている。
早瀬が山岡さん狙いだと言うのは優弥から聞いている。
ふたりの様子を見ていたら、山岡さんから見えないところで早瀬がこちらを睨みつけてきた。