【完】ボクと風俗嬢と琴の音
適当な場所で車を駐車させた大輝は、ゆっくりとわたしの方を向く。
鋭くて、真っ直ぐな瞳。全然優しくなさそうって最初は思ったんだよな。でもさ、大輝はいっつも優しくて、こんなわたしを好きだと言ってくれて、かといって無理やりに気持ちを押し付けたりはしてこなかった。
でもわたしは、ハルを好きだと意識し始めた時から、ハルの幸せを願うって思いつつも結局自分の気持ちばかり押し付けて
結果、このざまだ。
「隼人から聞いたよ、仕事は辞めるって」
「店長の、おしゃべり…」
「それが俺の為だと言うのなら嬉しいんだがな。
どーせ、井上晴人の為なのは一目瞭然だから、何か複雑だな」
「何よーあたしの事嫌いって言ったくせにー
どーせあたしは自分の気持ちも伝えずに人に八つ当たりばっかする子供ですよぉーだ」
こうやって拗ねてる自分も大嫌い。
風俗を正当化してきたけれど、本当は自分自身を1番軽蔑してきたのは、このわたしだ。
好きになろうとしてもどうしても好きになんかなれなくて
豪快に笑って見せるだなんて口だけで、自分を恥じてきた。
誰よりも自分を好きになれなかったのは、自分自身なのだから。
「俺は琴子の凛とひとりで立ってる姿が好きなんだが
誰に何と言われても自分っつー奴を持ってるお前が魅力的だと思ってたから
この間の琴子は全然琴子らしくなかった。
そんなにあの女に嫉妬しちまうくらい好きならば、さっさと気持ちを伝えろ」
「やだ!絶対に嫌
何回も言うようだけど、それだけはしない」
「関係を壊したくない、からか」