【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「琴音はいっつも誰よりも先に迎えに来てくれる。
まるであたしが帰ってきたのが分かってるみたい」
「いや、分かってるんだと思うよ。猫の聴力は人間の何倍も優れてるから
後、知ってる足音は記憶してるんだと思う。
宅配の人が来たって出て行きやしないんだから」
「もぉーこいつー可愛いなぁーちくしょー」
少しだけ背伸びして、ハルの肩の上に乗った琴音の頬を両手で包み込む。
すると琴音はぴょんっとハルの肩をつたってわたしの肩へ乗ってきた。
「お腹空いた?」
ハルの丸い瞳がキラキラと輝いて見えた。
さっきまでの真面目な顔と違っていて、それは安堵にも似ていて
うん。と言う前にグーとお腹が鳴ってしまって
それを聞いたハルはその場で大爆笑をした。
まるでさっきのわたしのように大爆笑をした。
「お腹で答えるな」
「うるさっ。これはッ今日何にも食べてないから」
「特製オムライスと特製ミネストローネがあるけど食べるかい?」
「オムライスッ」
今度はこちらが目を輝かせたのだろう。
自分ながら単純な脳みそをしていると思う。
それを見て、ハルはまた笑った。
わたしはハルの笑顔が世界で1番好きだから。
豪快な笑いとは少し違っていたけど、笑うと優し気な瞳がもっと優しくなって
それを見たら安心するんだ。暖かい陽だまりの下にいるみたいに、わたしまで優しい気持ちになれるような気がするから。